「手書きの習慣で、日常からの跳躍を」
ー大人の女性のための定番ステーショナリー『grand jeté(グランジュテ)』が生まれるまで(後編)

大人の女性に向けたステーショナリーブランド「グランジュテ」。コンセプトや、デザインのこだわりに触れた前編に続き、今回は誕生までのストーリーと、日々の活用法を伺います。


大人の女性が定番として使えるものを

グランジュテのプロジェクトが立ち上がったのは、2014年の10月。福嶋さんがマルマンに入社して2年半が経った頃でした。前職で商品パッケージなど紙のデザインに関わり、以前から紙や書くことが大好きだったそうです。

「以前、女性向けのステーショナリーを探したことがあったのですが、店頭で見かけるのは、花柄などシーズナルなものやキャラクターものがほとんど。どれも可愛いのですが、大人の女性がビジネスシーンで使うなら、シンプルで上質なものがいいですよね。弊社のMnemosyne(ニーモシネ)というビジネス向けノートのユーザーに女性も多くいらっしゃるとの声もあり、働く女性のためのスタンダードなステーショナリーという方向性で動き出すことになりました」


グランジュテ製品を手にする福嶋さん。マルマン本社ショールームにて

福嶋さんの思いに共感したアートディレクターの久能真理さんとともに、グランジュテの構想は本格的に動き出しました。しかし、それは同時に険しい道の始まりでもありました。

「久能さんはアートディレクターとして女性向けのものを多く手掛けられている方。大人の女性向けのものを作りたいということで、グランジュテのアートディレクションをお願いさせていただきました。久能さんとお話ししながら、仕様やデザインのイメージが形になっていきました。一方で、そのこだわりを実現したいと思っても、難しいことも多くて……」


A6サイズの糸かがりノート。しおりとして使うスピンは、軽やかなリボン素材を採用しています

「例えばつるつるした素材にくっきりした箔を押すとか、通常使わないリボンをスピン(≒しおり)に使うとか。私自身、知識の足りない場面が多く、自社工場の担当の方や協力業者さんには、何度もご無理をお願いしてしまいました。でも上司や先輩方のサポートで、トライアンドエラーを重ねながら進めることができました」

そうした情熱とこだわりは、素材選びから製本、手に持った感覚まで、細部に渡ります。

「表紙の素材はどういったものが相性がいいのか、同じ黒でも素材が変わるとどう印象が違うのか。言われて気がつくような本当に些細なことなんですけど、時間をかけて細かいところまで検証しています。大切にしたのは主張しすぎないこと。長く使っていただくには、流行を追ったり奇をてらったものではなく、シンプルかつ上質で、同時にさりげなく気の利いたデザインが必要だと考えました」


黒の素材選びは特にこだわったポイント。すっと手に馴染み、上質感のあるものを厳選しています

使い手の無意識に語りかけるような、さりげない工夫とものづくり。そうしたこだわりは、マルマンのプロダクト全体に通じるものだと福嶋さんは言います。

「主役は使う人とそこに書かれるものであって、書くという行為をそっと後押しするのがステーショナリー本来の役割なのではないでしょうか。なんとなく使いやすい、なぜか書くのが楽しい。そんな、使い手の無意識に寄り添うようなささやかな工夫を重ねることが大切だと感じています」


福嶋さんが考える、手書きの魅力

自身もグランジュテを愛用しているという福嶋さん。そんな彼女にとって、手書きの喜びとは?


愛用するA5サイズのリングノート。議事録やタスク管理など、日々の仕事で欠かせないそうです

「昔から手で書くことがすごく好きで、頭と手はつながっていると思っています。PCやスマートフォンとはまた違った脳の働きがある気がして、書くことでいつも発見があります。それに、手書きの文字って、書き手の人となりが表れますし、そういうところもいいですよね」

最後に、福嶋さんがおすすめするグランジュテの活用法について、教えてもらいます。

「私自身、書きながらものを考えるタイプというのでしょうか、壁にぶつかった時はまず書きますし、書くことでまさに扉が開くような気付きがあります。ポーチに入れて日々持ち歩くことで、ふとしたときに書く習慣が生まれています。仕事でもプライベートでも欠かせないですね」

「グランジュテを通して、そんな手書きの良さを再発見していただけたら、とても嬉しいですね。でも、本当は、使っていただければなんでもいいんです。私たち作り手のこだわりなんて気にせず、デイリーにガンガン使って欲しいです。ノートも便箋もあくまで裏方ですから」

素敵な便箋が手元にあれば、お礼状を書いてみようと思い立つ。ノートを持って出かければ、何気ない気づきや発見を書き留めたくなる。お気に入りのステーショナリーは、日々の中でペンをとる気持ちをささやかに後押ししてくれるもの。グランジュテは、そうやって日々の暮らしを、そっと豊かなものにしてくれるはずです。