職人の手に蓄積した40年の技術力。
マルマンの箔押しを支える職人(齊藤千代志)

印刷の工程に用いられる「箔押し」という技術をご存知ですか? 薄く引き伸ばされた金属の「箔」を180度もの高熱とプレスにより転写する箔押しは、機械によって自動化されている部分もありますが、繊細な作業が求められる製品に関しては今も職人さんの手作業によって行われています。マルマン相模工場で箔押しの工程を担っているのがマルマン入社歴53年、この道40年の職人、齊藤千代志さん。今回は相模工場で行われている箔押し作業の様子と、その匠の技を紹介します。

 

ミリ単位の厳しい品質基準を支える、熟練工の手仕事


マルマン相模工場では一般流通する商品に加え、企業や学校からのオーダーを受けてつくる「別製」の商品も製造しています。クライアントのロゴや校章が印刷されたスケッチブックやバインダーなど、特別な想いが込もったアイテムを彩る加工工程の一つが、今回ご紹介する「箔押し」です。

箔押し職人として働く齊藤さんは、この道40年のベテラン職人です。相模工場に箔押し機が導入された時からこの工程に携わり、72歳を迎えた今も現役で働いています。職人の技術力が品質を左右するこの工程ですが、一朝一夕で身につくものではなく、最初は失敗も多かったと齊藤さんは話します。

 

「箔押しとは、高熱とプレス機の圧力によって製品に「箔」を転写する工程。作業を続けていくうちに機械は冷めていくし、プレスの圧も弱まってしまう。品質が安定するように、それを手作業で調整しながら進めています。その勘所がわかるまでに数年かかりましたよ。」

手元の計器と長年培った感覚を頼りに行うプレス機の圧力と温度調節。ミリ単位の品質維持のために欠かせない作業のひとつ

 

マルマンの定める品質管理では、印刷の際に許された誤差は1ミリまで。箔押しの立体的な印刷方法により質感は高まりますが、ミリ単位での品質管理はベテランの齊藤さんであっても簡単ではありません。そして、その誤差を無くしていくためには、機械の手入れが大事だといいます。扱いやすいように自分で切り出した金属板やアクリル固定具を取り付けるなど、独自のセッティングにより箔押し機を自身の「相棒」へと育て上げてきました。

 

「箔押しを担当するようになってからはずっとこの機械と一緒にやってきましたね。抜き”の作業を行うこの機械も、10年前に工場に導入してから自分で調整を、作業工程も自分で作り上げてきました。」

製品デザインに合わせて素材を切り抜く「抜き」作業の様子。こちらも箔押しと同様の機械を使って行われている

 

マルマンの歴史と共に歩んで半世紀。そして身体が続く限りこれからも・・・

 

マルマンの歴史と共に50年以上をこの工場で過ごしてきた齊藤さんに、マルマン製品の魅力を伺うと「上質な紙を使っていることですね。ペンの滑りが良く、描き味が気持ちいい。私自身は絵が苦手なので、あまり描くことはしませんがね(笑)」と笑顔を見せてくれた。その手には長年培った技術力が宿っている。

手作業により進められる工程のため、効率の良い作業工程を自分で工夫できるのがこの仕事の魅力であるという。また、自分のペースで仕事ができ働きやすいことも、マルマンで長く働くことが出来た理由だと話す。相模工場でもきってのベテランスタッフとなった齋藤さんですが、これからも最前線で働いて行くのでしょうか?

 

「集団就職で山形から上京し、マルマンに入社してこの仕事一筋でやってきました。身体が動くうちは、この仕事を続けたいですね。」

 

今回お話を伺った、相模工場で箔押し工程を担当する齊藤さん。入社当時とは工場で取り扱う製品やご自身の仕事も様変わりしていますが、長年培ってきた“箔押し”の緻密な職人技でこれからもマルマンの高品質なものづくりを支えていきます。

 

相模工場内の様子。細かく区切られた工程に合わせ、効率的な配置がされている

マルマンお馴染みのスケッチブック「図案」シリーズのB6サイズも、ここ相模工場で製造されています。